ドライブ前夜、吉田さんから確認の電話があった。彼は私が行きたいと言った新潟の漁港へ行く気満々だった。私はとりあえず話をあわせて電話を切ったけど、まだ付き合ってもいないし、遠出したら一泊することにもなるだろうし、布団の中であれこれ考えていたらあまり眠れず朝を迎えてしまった。そしてお迎え予定時刻より少し遅れて彼から電話が鳴った。

「もしもし?」

「遅れてすまんな。渋滞でなー。あと5分くらいで着くわ。」

「わかりました。ではコンビニ前まで出てますね。」

「おう、よろしく。」

私は家を出て、コンビニで吉田さんの好きなブルーマウンテンのコーヒーを購入し到着を待っていた。すぐに吉田さんの車が見えた。私が待つ前に車を寄せてとめると、助手席の窓が開き、吉田さんが笑顔で私に話しかけた。

「待たせてごめんな。」

「いいえ。」

私は車に近づいた。だけど、車のドアに手をかけるのをためらった。なかなか車に乗ろうとしない私を見て、彼は運転席から降りてきてくれた。

「どうしたん?」

「・・・」

「あ〜そうか。気がつかなくてすまんなぁ。姫にはドアを開けてやらんとな。」

「あ、いや、そういうんじゃなくて・・・」

「えぇから、ほら乗って!」

彼の車は四駆で座席シートが腰より高い位置だったので、彼は助手席のドアをあけると私を抱っこするようにひょいと持ち上げて助手席に座らせた。

「やだ、恥ずかしいじゃないですか。」

「お姫様、ドア閉めますのでお気をつけてください。」

冗談を言って笑いながら助手席のドアを閉めると、彼は車の前を周って運転席に戻ってきた。

「さぁ行くで!」

「ちょっとまって!」

私は吉田さんの腕をつかんだ。

「なんや?」

「正直今日のドライブ、やめようか悩んでました。」

「なんでや?」

びっくりした彼の顔を見つめ私は話す内容を頭の中で整理した。