オフィスレディの裏の顔

「喜んでくれた?」

「あ、はい・・・でも何のお祝い?」

「ただ渡したかっただけや。」

照れくさそうに彼は言った。私も恥ずかしくなって顔を赤らめた。

「水沢さま、記念にお写真はいかがですか?」

「えっ?」

どうしたらいいのか戸惑っていると、吉田さんが変わりに答えてくれた。

「せっかくだしな、お願いします。」

黄色のガーベラをメインに大きく束ねられた花束を持って2人並んで撮った写真を数年後私は見返して、この時が彼との間で一番楽しい時だったのかもしれないと思うのだった。

デザートを頂いてからレストランをあとにした。お会計は全て吉田さんがもってくれた。花束まで頂いて、今日のデート?にすごくお金をかけてくれたんだなと思うと急に申し訳ない気がしてきた。このまますぐにバイバイするのではかわいそうかなという気持ちと、レストランでのサプライズで気分もよくなり、もう少しお姫様気分でいたくて彼に車に乗る前に少し散歩をしようと提案した。そして海浜公園を歩いているうちに、なんだかすごく寂しい気持ちになって彼の腕をつかんだ。

「どうした?」

彼の問いに、手がつなぎたいとは言えず、私は黙っていた。すると彼の方から話しはじめた。

「あ〜言っちゃおうかな、さっき一度あきらめたんやけど。」

「何ですか?」

「実はな・・・あ、いやひかれるかもしれんわ。」

「そこまで言って隠さないでくださいよ。」

「あんな・・・レストランで言えなかったんやけど、」

告白?私はドキドキしながら彼の目を見た。

「部屋とってんねん。」

「!?」

「あ、いや、その変な意味じゃなくて、酔って帰り面倒になるかもしれんやろ?俺も車やからもし飲んだときのために・・・」
私は爆笑した。

「なんだ、告白されるのかと思っちゃいました。部屋とってるなら言ってくれればよかったのに。お酒飲みたかったでしょ?」

「いや、酒はいいねんけど。」

「キャンセルしたの?」

「いやしてない。」

「・・・」

沈黙が走った。