オフィスレディの裏の顔

「お飲み物ですが、」

スタッフの方がワインリストを見せながら説明し始めた。高いボトルなんて入れて大丈夫だろうか?私は気を使ってソフトドリンクのメニューはないかとスタッフに聞いた。

「え!飲まないの?」

「のど乾いちゃって、最初の一杯は潤そうかと。」

「水沢さん、シャンパン飲める?」

「飲めますけど・・・」

「だったら両方頼もう。」

彼はシャンパンボトルをオーダーした。普段はガッツリ生ビール派なのに、なぜシャンパンを・・・吉田さんは、どちらかと言えば芸人タイプ。なのにオシャレに気取った感じでオーダーする姿が少しかわいく見えた。

「何笑ってんの?」

「いいえ、何でもないです。」

シャンパンと炭酸水がテーブルに用意された。

「吉田さん、ビール飲まないの?」

「車で来たしな。」

私はすっかり忘れていた。私も運転できるしそれほどアルコールが好きなわけではないからと、彼にお酒を勧めたが飲まない意志は固かった。乾杯したあと、彼はメニューを見ながら、私が食べたがっていたフォアグラソテーはどれかを聞いてきた。

「裏メニューなのでここにはないです・・・」

「そうなん?ちょっと聞いてみようよ。」

彼がスタッフを呼んだので、私からスタッフに説明をした。

「お客様のおっしゃっているお料理と全く同じものかわかりませんが、フォアグラを使った、それに近いものはこちらですね。」

そう言ってメニューを指さした。6000円もするそのお料理を、吉田さんは平気な顔をして2皿オーダーしたとき、私は心の中で今日のお会計は私も1万以上、いやもしかして2万近くの負担はあるだろうなと覚悟した。

ここはレインボーブリッジ側が一面窓になっていてテラス席もあり、私たちはお料理が運ばれるまできれいな夜景を見ながらしっとりと飲んでいた。私たちのテーブル近くに常にスタッフの方が立っていらして、会話が聞こえている感じがして話しずらかったのもあって、私はただシャンパンを飲み続け一気に酔いが回っていた。