オフィスレディの裏の顔

「ところでどうしてお台場なの?」

「たまには綺麗な景色見ながら食事もえぇかなと思ってな。いつもおっさんが行くような居酒屋に付き合ってもらって悪いなと思ってな。」

「別によかったのに。」

「最近お台場行った?」

わりと頻繁にお台場には来ていたけど、吉田さんがガッカリするかと思って黙っていた。たいてい車を持っている人は、ドライブコースに、晴海埠頭、レインボーブリッジ、お台場あたりを入れたがる。私はすでにいつ誰と何をしにここに来たか、思い出が混乱し、感動すらしなくなっていた。レインボーブリッジを渡る間、ただボーっと景色を眺めていた。

「まだおなかすかないよね?」

「はい。」

「アクアシティでぶらぶらしようか?」

「はい。」

吉田さんは駐車場の入り口がわからなかったみたいで、一度通り過ぎてしまった。私はわかっていたけど黙っていた。同じところを何週かしたあと、結局日航ホテル側の駐車場に止めてアクアシティまで歩いて戻ってきた。

「どこか見たいところある?」

「とくにないですけど・・・じゃぁディズニーストアは?」

私は彼とディズニーストアに行き、たいしてほしくもないプーさんのぬいぐるみをおねだりして買ってもらった。それから外に出てお台場海浜公園を散歩してるうちに1時間くらい経過した。

「そろそろおなかすいたやろ?」

「そうですね。どこか入りましょうよ。」
「店予約してあるんやけど、いい?」

「構いませんけど、どこですか?」

吉田さんは答えずに歩き出した。私も黙って後をついて行った。駐車場の方へ向かったので車で移動なのかな?と思っていたら、そのまま通過して日航ホテルの入口に向かって行った。入口近くの館内案内図の前で立ち止まったので、私は彼がお手洗いを探してるのだと思って教えてあげた。

「お手洗いならそこの階段を上がったところですよ?」

「いや、違うんだ。」

「何探してるんですか?」

吉田さんはまた黙ってしまった。