ところが外に出ても、吉田さんは既に真っ直ぐ歩ける状態ではなく、酔いが覚める見込みはなかった。

「今日はもう帰りましょ?」

私はふらふらと歩く吉田さんの腕を引っ張った。でも彼は首を横に振った。

「いやじゃないです!帰ります!」

少しきつい口調で言う私に吉田さんは驚いて、その場でしょんぼりと顔を下げてこうつぶやいた。

「あ、じゃぁ、僕、タクシーで送りますよ。」

「酔っ払ってる人に送ってもらわなくても大丈夫です。まだ電車もあるしタク代もったいないでしょ?」

「いや、僕タクシーで帰るから、水沢さんの家は通りみちだし・・・」

彼の家までタク代で帰ると2万くらいする距離で、私はそれを心配し彼を駅に連れて行こうと頑張った。だけどなかなか言うことを聞いてくれないので、結局タクシーを拾って乗った。私の家まで5分くらいの距離だったのに、彼は乗ってすぐ寝てしまった。

「吉田さん?私おりますよ?」

「・・・」

無反応な彼の腕をゆすったり、頬をパチパチとたたいたりした。どうしよう・・・全く起きない彼に困っていると、タクシーの運転手さんが私にこう提案して下さった。

「彼の家まで送ってから私起こしますよ。」

「そうですか?すみません・・・」

そして私が車をおりようとしたとき、彼の目があいた。

「あ、着きましたか。」

「吉田さん、何度も起こしたんですよ!」

「すみません。」

「私おりますから、吉田さんの行き先を運転手さんに伝えて下さい。」

すると彼はお財布を出し、支払いをはじめた。

「吉田さん?ここは私の家です。」

「あ、僕もおります。」

「吉田さんは自分の家に帰ってください。」

「大丈夫。僕またタクシー拾う。」

彼はろれつがまわってなく、会話もかみ合ってない気がした。まさか・・・私の家に上がる気じゃ?