二年半付き合った彼女と別れた。
理由は、俺に精子がないから。
「ウソだよね、こうちゃん……そんな冗談、面白くないよ」
ちゃかすような口振りとは裏腹に、彼女の笑顔は引きつり、小さな両手を胸元で強く握り合わせている。
彼女がどんな言葉を望んでいるか、知っていた。
けれど俺は、それとは正反対の結論を繰り返す。
「嘘じゃねぇよ。飽きた。つまらないんだよ、お前、マグロだし」
左頬の衝撃と同時、校舎裏に乾いた音が響く。
彼女は泣いていた。
泣きながら、俺を置いて走り去る。
夏休みを目前に控えた、初夏の出来事だった。
彼女との出会いは、記憶にない程幼少期まで振り返る。
我が家の向かいに、若夫婦が越してきた。
これが、俺が産まれる二年程前の事。
うちの親と年が近かった事もあり、旅行に行けばお土産を渡す程度に、友好的な関係を築く。
それから約二年後、俺、長谷川孝太が産まれる。
追いかけるように、半年程して梨果が産まれた。
柿本梨果。
後に、「お前の名前は食いもんばっかだな」と散々からかいの種になるのだが、その話は別の機会に。
理由は、俺に精子がないから。
「ウソだよね、こうちゃん……そんな冗談、面白くないよ」
ちゃかすような口振りとは裏腹に、彼女の笑顔は引きつり、小さな両手を胸元で強く握り合わせている。
彼女がどんな言葉を望んでいるか、知っていた。
けれど俺は、それとは正反対の結論を繰り返す。
「嘘じゃねぇよ。飽きた。つまらないんだよ、お前、マグロだし」
左頬の衝撃と同時、校舎裏に乾いた音が響く。
彼女は泣いていた。
泣きながら、俺を置いて走り去る。
夏休みを目前に控えた、初夏の出来事だった。
彼女との出会いは、記憶にない程幼少期まで振り返る。
我が家の向かいに、若夫婦が越してきた。
これが、俺が産まれる二年程前の事。
うちの親と年が近かった事もあり、旅行に行けばお土産を渡す程度に、友好的な関係を築く。
それから約二年後、俺、長谷川孝太が産まれる。
追いかけるように、半年程して梨果が産まれた。
柿本梨果。
後に、「お前の名前は食いもんばっかだな」と散々からかいの種になるのだが、その話は別の機会に。