成長する

美幸の体がいつまでも子供っぽかったのは、成長が遅かったのではない。成長、できない体だったのである。

そして被害者がすべて女子中学生だったのは、美幸に、女子中学生としての体を与えるため。

人の命をいくつもいくつもつぎ込む、究極的に凄惨な、お人形遊び。

奈美は、こんな男に一目惚れした自分を呪った。

「こんなことして、美幸が喜ぶと思ってるの!? だいたい、成長するたびに姿が変わってたら、おかしいって思われるじゃないのよ!」

「バカだな。そんなことにはならないよ」

「どうして……!」

「どうして? 君、自分の体が自分のものじゃないなんて思ったこと、あるの? 自分の体は以前、だれだれさんが使っていたものです。この腕はだれだれさんのものです。そんな風に思ったこと、あるの?」

そんなこと、あるわけがない。移植手術を受けた人間ならまだしも、生まれてからずっと付き合ってきている体が他人ものだったなどと、一度も。

「美幸には、体を新しくする記憶は残らない。同時に、北門の秘法によって、周囲の人間もそこにある美幸を本物の美幸だと認識する。記憶の上塗りだよ。だから、その時その時の美幸が、美幸にとっては本物なのさ。僕の美幸は、幸せな時だけを記憶に刻んで生きるんだよ」

「……っ、狂ってる……! そんなの、人間のやることじゃない……!」