静かになった妹の腕を放し、頭だけを抱えた兄は、

「ああ、最初からこうしたほうがよかった。な、美幸」

「よぁった、ぉかっあ」

そう、優しく少女に微笑んで、階段を下りていった。そのあとを、少女が首なしの美幸の体を引きずって、ついて行く。

やがて兄は、美幸の探していた真実の床を踏む。

場所としてそこは、美幸の家の、地下だった。

あの家の二階からは地下まで螺旋階段が掘られ、この地下室へ続いていたのである。
兄は、階段を下りてすぐ、壁のスイッチを押した。蛾の羽ばたくような乾いた音とともに電気が次々灯り、部屋が明るくなる。

結構の広さを誇る地下室の壁には、溶液で満たされた円筒型のケースが並んでいた。その中には、人間の腕が、足が、腕が、足が、腕が、足が、一ケース一セットずつ入っている。反対の壁には、生首や胴体が同じ状態で並んでいた。