緊張が解けたのか、それとも落胆したのか。気抜けしてしまった美幸は、前を向いた。

その時ふんづけた小石が、じゃくりと、ローファーの下で泣き声をあげる。

それがひどく、耳障りだった。

「っ」

力任せに、小石を蹴飛ばす。が、どうやら砂粒の集まった塊のようなものだったらしく、小石は乾いた音をあげて砕けてしまった。

だからよけいに、唸りたくなる。小石なんて、どこか遠くへ飛んで行ってしまってくれたら、スカッとしていたのに。

山積みにされた問題のわけのわからなさに、腹まで立ってきた。しかも、それをどう解消いていいかわからない。

どうして自分はあの少女に抱きしめられていたのか。あの少女の目的はなんなのか。なぜ親友を殺したのか。少女を襲うのか。琴美を返せ。奈美は奈美でどこに行ったのか。捜査に乗り出すと言い出したのは奈美なのに。心配をかけて。ふざけるな。帰ってきたら怒ってやる。楓という女性の眼差しが、頭から離れない。もうイヤだ。和幸の質問も嫌いだ。椿は意味がわからない。

自分が、いったい、なにをしたのか。

山積みの問題に八つ当たりして、喚き散らして、泣きたくなった。そして美幸は走り出す。

家に帰れば兄がいる。人間じゃない? ばかばかしい。和幸の戯れ言を、彼がそうするように鼻で笑いながら、美幸は足を速めた。