成長する

凪いだ心は、どこまで鈍感へ落ちていくのか。

奈美の発言に、腰をまったく浮かすことなく、ただ単純に頷いていた。

(ああ、早くもとに――正常な私に戻んなきゃ)

じゃくり。じゃくり。かちん。じゃくりじゃくりかちん。

「気になってることはまだあるわ」

「なに?」

「どうして被害者の手足をもぐのかよ。人間の手足なんて目立つし、運びにくいし、仮に持ち帰ったって保存も利かないのよ。大きな冷凍庫でもない限りね。なんのために、被害者の手足をもぐのかしら。理由は絶対あるわ」

「う~ん」

「さらに言えば」

じゃくり。かちん。

「腕をもがれている子と足をもがれている子の違いも気になるわ。意味があるのかしら?」

「……鑑賞用」

「は?」

「――って、琴美ちゃんは言ってたなって」

「やめてちょうだい。バカらしい」

奈美がいつものように肩をすくめる。ただ、そのいつもの光景に、琴美が不在だ。

慣れていかなければ、ならないのだろう。

「仮に鑑賞用だとするわよ? でも、人間も動物なんだし、死んだら腐るの。保管して楽しいものとは思えないけど?」

つまらないくらい正論だ、と琴美なら言うだろう。