成長する

じゃくり。かちん。じゃくり。かちん。

変な音がして、美幸は顔をあげた。いったいいつ出したのか、奈美がボールペンとノートを構えている。ノック式のボールペンで、頭をノックして芯を出したら、サイドの出っ張りを押してしまうタイプだ。ノックの部分が違うから、じゃくり、かちん、じゃくり、かちんと、交互に音がする。

じゃくり。かちん。

「奈美ちゃん、それなに書いてるの?」

「相関図よ。言ってしまえば、起こった出来事の見取り図ね」

「なるほど」

じゃくり。かちん。

「犯人は、体がおかしい女の子だった。たしかに教われたのは夜中だったし、相手の姿もよく見えなかったけど、断言できる」

「どうして?」

「声を聞いたのよ。『待て待てぇ、逃げないで』って」

じゃくり。かちん。

奈美のボールペンはどんどんノートを埋めていく。

『犯人』や『少女』、『被害者』などの代名詞に、『化け物』や『足なし』などの形容詞が加味される。