美幸の沈黙を、奈美は肯定と取った。話を広げる。
「普通、目の前で地べたに倒れてるヤツと遠くへすばやく逃げたヤツ、どっちを襲うと思う?」
「えーと……」
そもそもなにかを襲った経験がないのだが、
「目の前で倒れてるヤツ、かな」
理屈として、それぐらいの判断は簡単だった。
いつものように、鷹揚に腕組みをしている奈美が、こ、くんと頷く。
「にもかかわらず、アイツは私じゃなく琴美を追いかけて襲った」
「うん」
「つまり、『被害者は女子中学生』以外にも、犯人にはルールがあるのよ」
「ルール」
それがなんなのか。
恐らく、警察も、マスコミも、この市内の誰もが気にかかっているに違いない。
だれにもわからない。犯人にしかわからない。だから逆に、それさえわかれば大きく、それこそ吐息も聞こえそうなほど犯人の近くまで、迫っていける。
奈美は恐ろしくないのだろうか。
親友をあやめた化け物。
奈美はそれを探し、再び対峙するのが、恐ろしくは、怖くは、ないのだろうか。
大人は、子供の浅はかさを笑うかもしれないが――羨ましい、勇気だと思った。
「普通、目の前で地べたに倒れてるヤツと遠くへすばやく逃げたヤツ、どっちを襲うと思う?」
「えーと……」
そもそもなにかを襲った経験がないのだが、
「目の前で倒れてるヤツ、かな」
理屈として、それぐらいの判断は簡単だった。
いつものように、鷹揚に腕組みをしている奈美が、こ、くんと頷く。
「にもかかわらず、アイツは私じゃなく琴美を追いかけて襲った」
「うん」
「つまり、『被害者は女子中学生』以外にも、犯人にはルールがあるのよ」
「ルール」
それがなんなのか。
恐らく、警察も、マスコミも、この市内の誰もが気にかかっているに違いない。
だれにもわからない。犯人にしかわからない。だから逆に、それさえわかれば大きく、それこそ吐息も聞こえそうなほど犯人の近くまで、迫っていける。
奈美は恐ろしくないのだろうか。
親友をあやめた化け物。
奈美はそれを探し、再び対峙するのが、恐ろしくは、怖くは、ないのだろうか。
大人は、子供の浅はかさを笑うかもしれないが――羨ましい、勇気だと思った。

