成長する

奈美は、琴美を襲ったのは人間じゃないと言っていた。

〝楓さん〟が、だからといって〝人間じゃない〟なにかに対抗できる人なのかというと――それは、美幸の与り知れないことである。

「私達で捕まえよう」と言った奈美に、ほかにあてがあるのか、考えがあるのか。

それは、美幸の質問になかなか答えようとしない、苦々しい横顔から、想像できた。

美幸に、奈美の不満を解決する手立てはない。

せめてできることと言えば、

「奈美ちゃん気を落とさないで? 私達だけでも、がんばろうよ」

そう、友人を奮い立たせることぐらいである。

それさえも、具体的になにをしよう、という計画すらありはしない。ただ、そう、口から出任せに近い。

大丈夫ではないのに大丈夫と答える風っぴきと似たようなものだ。

だが、根拠も説得力もない、体当たりの励ましが必要な時もある。そこまで美幸が考えたかは定かではないが、今が、その時だった。

「そうね……私らで、なんとかするしかないわ。ここでくよくよしてても、琴美に笑われるだけだもの。そんなのごめんだわ」

「そうだね」

琴美は死んだ。いや、殺された。

いったいどうして、琴美が殺されたのか。