きりのいいところまで曲が流れたからか、静かになる。人が出てくる気配はない。聞き耳をたてて待っても、静は静か。

それで奈美が、もう一度インターホンに指を伸ばした時だった。

じゃくり。

ほぼなんの前触れも気配もなく、玄関のドアが開いた。ほぼ、というのは、鍵の開く音がやたらと、焦らすようにゆっくりだったし、ドアも、風で押されたように少しずつ開いたからである。

ドアが開いたのはいきなりだったが、中から人が出てくるまでは、佇まいを整えるだけの時間は、ゆうにあった。

現れたのは少女……いや、自分達をこそ少女と呼ぶならば、開かれた玄関先でこちらを見つめてきているのは、幼女だった。

奈美が腰を折って、幼女と目を合わせる。

しかし、

「おか」

とまで。

なにか言おうとした瞬間に、幼女はくるりときびすを返し、家の中へ逃げてしまった。

いや。玄関は開いたままなのでむしろ、お使いを終えたので中へ戻ったという具合だ。あんまりすばやく引っ込んだので、犬笛で呼びつけられたみたいだった。