質問を、ゆっくり続ける。

普段の気丈さはどこへいったのか、嗚咽で喉を震わせ、何度もしゃくりあげる奈美こそが、小さな女の子のようだった。

「だって……ありえな、かったから」

「?」

「着てるのはボロ布みたいなワンピース、だったし……顔も半分腐ってて、手足もぐちゃぐちゃで……変な方向に折れ曲がって……」

「……」

奈美が「う、うっ」と口を押さえたのは、恐らく、人として見ることができなかった少女の姿を思い出してだろう。

美幸は、背中を撫でてやることしか、できない。

「化け物だったのよ、その子……」

と、それでも奈美は言葉を接ぐ。

「私も、琴実も、一緒に襲われたわ……」

「もういいよ」と言ってあげたかったが、そうもいかなかった。

「でもアイツ、最初から琴実を狙ってるみたいだった」

自分が聞かなければ、いったいだれが、奈美の見たものを聞き受ければいいのか。

「信じらんない力で殴られて、塀にぶつかって、私、立ってらんなくなったの」

「……」

「逃げてって叫んでね……琴実が走り出すのが見えたわ」

「…………」

「その背後から、アイツは琴実に掴みかかって……それで、それで……!」