「いーよ別に。慣れっこだし。
どうせ誰も信じてなんてくれないんだよ。
あたしがケガした時だって、あたしの言ったこと誰も信じてくれなかった。
アキたちだけ。
あいつらだけだよ。
ほんとバカ。
だから柄にもなく、気になったんだよ。
アキがバイクのケツに乗せた女って一体どんな奴かなって」
話が飛び飛びでぐちゃぐちゃで、何を言ってるのかよくわからなかった。
だけど、私からそらしたままに語る瞳が、とても柔らかかった。
彼女は何かを伝えようとしてる。
言葉を伝えようとするんじゃなくて、もっと彼女の根底にあるものを伝えようとしているかのような、
そんな感じがした。
シンと静まり返る教室は、キリキリと空気が張りつめる。
授業中ゆえに廊下も無音で、私たちしかいない教室というよりも、この話題のために用意された二人だけの隔離空間みたい。
サキはその表情を曇らせ、手のちからを緩めた。