気の強そうな、ツリ目がちの真っ黒い瞳は、芯から私を捉えている。
そこから感情を読み取れはしないけど、敵愾心はないような気がした。
澄んだ瞳に見えたから。
私は準備をしていた手をとめて、少しだけ見入ってしまう。
クラスメイトたちは教室の移動を始めたものもいるようだが、彼女はそれに構うことなく、机の上は準備すらされてないようだった。
姿勢も、椅子に腰掛けたまま、立ち上がる素振りもない。
「名前」
私を見つめながら言った言葉に、かすかな苛立ちを含んで聞こえたのは、私の気のせいだろうか。
「名前、なんだっけ」
およそ人にモノを尋ねる態度ではないが、つっかかる勇気はなく。
「藍川結香……」
素直にフルネームを口にした。
「あたしはサキ」
投げるようにそう言った彼女は、私の机に両腕をつけて、身を乗り出すようにしてほんの少しだけ私に顔を近づけた。
彼女から香る柑橘系のような匂いが鼻へと到達し、
ほのかな刺激にむずっとする。
「あんたさ。アキのバイク、乗ってたでしょ」
睨みつけるような視線と、つっけんどんな言い方に、むずがゆさが吹き飛んだ。



