「ヒロシのキレっぷり、逆に笑っちった」
見たことのあるほうの生徒がくすくすと笑った。
ヒロシというのは生徒会顧問で、厳しいことをいう傍ら、キレやすい事でも定評がある教師だ。
ぎょろりとした目つきに、神経質そうな細身の体躯で怒る姿は、迫力があるというよりもどこかユーモラス。
見かけ上は恐れながらも、腹の底ではしれっとしてたりする生徒もいるようだ。
そのヒロシ先生が、また誰かを怒ってたらしい。
それとも彼らを怒ったのか。
どちらにしても私には関係のないことだと思い、そのまま通り過ぎようとした、その時。
聞こえてきてしまった。
「挨拶に立つのちょっと遅れたくらいで、あんなにキレなくてもなー」
「だよなー。会長が怒られてんの初めてみた」
「たかだか2、3日だっけ? ヒロシは大げさなんだよな。ところでさ──」
……え?
思わず振り返ったけど、彼らの話題はもう他のものに移っていた。
でも確かに聞こえた。
怒られたのは秋月会長で、
怒られた理由は挨拶に立つのが遅かったからで、
それも2、3日続いたからだと──



