しばらくバイクはわからない道を走ったけれど、やがて見覚えのある国道を通り抜けていく。


自分でも気付かないうちに神経が尖っていたみたいで、見覚えのある場所に出てようやく息を吐いた。


バイクは構わず走り続けていたが、何やら立派な邸宅の前まで来て止まった。


バイクから降りると、男性は追ってきたユキトさんに向かって言った。


「俺はこの子送ってくからここに置いとくけど、ユキは車庫に入れとく?」


「僕が送りましょうか?」


男性は一瞬ユキトさんの言葉に乗りかけたかに見えたが、
ちらっと私を見る。


「いや、いい」

と、にやけそうになるのを我慢したような顔で、首を横に振った。


「暴れるだろうからそっちのフォロー頼む」


暴れるって、誰が?
もしかして、私が……?


私が首を傾げるさなか、ユキトさんは、合点がいったように苦笑した。


「からかうのはほどほどにお願いしますよ。
じゃあ車庫に置かせてもらいますね」


「ほどほどに善処しますよっと。……さ、ついてきて」


おどけた調子の男性に促され、私は恐る恐る後ろをついて歩いた。