ユキトさんの友人は、その場に立ち止まったまま。
ユキトさんを見かけてから友人もずっと目に入ってた筈なのに、私の意識には全く見えていなかった。
そして今、それが秋月会長だという事に、私はやっと気付く。
いやしかしそんな事よりも、ユキトさんがこっちに向かって歩いてきてる事のほうが、私にとっては大問題で。
ユキトさんが誰と歩いてようが、興味の範疇にない。
だから秋月会長までの距離と、彼のうざったい髪のおかげで良く見えないその顔が、どんな表情を浮かべているかなんて、気にしてる場合じゃなかった。
私はぎゅっとお弁当を胸に抱えながら、近付いてくるユキトさんを見つめた。
徐々に近付いて来たユキトさんは、もう、すぐそこで。
私はユキトさんに話し掛けられる前に、挨拶だけして逃げようと思った。
無視は出来ないから。
でも今はまだ、ちゃんと話すことも出来そうにないから。
だから、挨拶だけ。
「こ、こんにちは、ユキトさん……っ」
決死の覚悟と言っても差し支えないくらい、私は懸命に声を出した。



