「アキ、そんなに引っ張らなくても、ちゃんと行くって」


ユキトさんは微笑みながらこちらを振り返り、私に小さくバイバイと手を振った。


私は慌てて頭を下げる。


周りの、登校している生徒たちの喧騒にまじって、ユキトさんの笑いを含んだ声が聞こえた。


「アキ、必死過ぎ」

「ウゼェ」

「ほら、動揺してるのが丸わかりだよ。ほんと天の邪鬼に素直だね」

「違う」


頑なに否定をする秋月会長の様子がヘンだけど、何がどうヘンなのか気付く前に、二人は校門前に行ってしまう。


二人の姿が遠ざかり、声が聞こえなくなってから、私はふうと溜まっていた息を吐き出した。