自分でも何故教室を飛び出したのかわからないのに、

理路整然と言えるわけがない。


それにこんな至近距離で顔を突き合わせられたら、余計に泡をくう。


不審さ極まりない。



だが、秋月会長にとっては、私の反応はさして気にとめるものじゃなかったらしい。


この距離も。


意識してる私、いったい。



「で」


あっけないほどに流されたのち、

眼力がより一層凄みを増す。


ぐっと距離がつまり、ひそめた声が鼻先を掠めた。


「どこまできいた」

「……な、なにも」


本当になにもきいてないのだから、どんなに見られようと、秋月会長が都合を気にする答えは出るわけがない。


だが私の記憶を確かめるような視線を、たっぷり向けてくる。

私が本当になにも知らないらしいのを見ると、秋月会長は小さく息をはいた。



そんなに気になるなんて、一体なんの話をしたのかと問いたい気持ちもわいたが、

きいたからと教えてはくれそうもない。


「──なら、いい」