振られることはわかっていた。



彼は私のことなんてきっとわからないし、
覚えていない。



それでも、やっぱりちょっとだけ期待していたのは事実で。



「お時間とらせてすみませんでした」



そう頭を下げてそのまま、顔を上げずに背を向けた。



溢れる涙が見えないように。



「……ごめん」



その呟くような彼の言葉を背中越しに聞きながら、

緩やかな風に流されていくのを感じながら、


私はその場から走り去った。