「え」
思わず声を上げたのは私。
その声が置き去りにされそうなくらい、勢い良く私の腕が引かれた。
「行くぞ」
何度も聞いた、理不尽な台詞。
ほんの少し胸に湧き上がった感情は、なんという名前なんだろう。
諦めでもなく、懐かしさでもないこの感情は。
「あ、おい……!」
すれ違った先生が、驚愕に目を見開いている。
……ん?
先生とすれ違う??
「秋月! どこへ行く気だっ! 戻れー!!」
顔全体を口にして、先生が大声で叫んだ。
当然だ。
もうすぐSHRが始まるというのに、秋月会長と、腕を引かれた私が、昇降口へとは向かわず真逆へと走っているんだから。
会長の名を叫び続ける先生だが、追ってくる気配はない。
「ど、どこ行くんですか」
てっきり校舎へと連れ込まれるんだと思ってた私は、気が動転しながらも、必死で行き先を尋ねる。
何かぼそぼそと聞こえたが、うまく聞き取れない。
観念して、というより……ほんのちょっぴり、気持ちが高揚していた。
私は秋月会長に連れられるがまま。
何処へ向かってるかなんて、些細な事かも、なんて思っていた。



