そしてナツキは私に視線を戻すと、申し訳なさそうに謝罪をした。
「ごめんな、結香チャン。痛かったよな」
「いえ……大丈夫です」
掴まれた腕はまだ少しじんじんとするけど、すぐにおさまるだろう。
控えめな音量の言葉はちゃんと届いたようで、ナツキは一変してにかっと笑った。
「そう言ってもらうとこっちも助かる」
なんだか表情がくるくるとよく変わるひとだ。
秋月会長は常にほぼ無表情だけど、ナツキは笑顔がデフォルトっぽいぶん、人当たりは良さそうに感じる。
ナツキが浮かべる笑顔の信用度はゼロだけど。
「まーこっちもムキになっちゃったとこあるからな」
照れくさそうに視線をそらして言ったナツキこそ、本心をぽろっともらしたように聞こえた。
背後では、遅刻すれすれで門に滑り入ろうとする生徒へ、ハッパをかける先生の声がし始める。
「やべ。本気で遅刻すんぞ」
くるりと背を向けたナツキをしり目に、秋月会長は驚くべき行動へ出た。



