「まあ細かい事はいいじゃん」
そう言って、何故かチラリと私から視線を動かした。
つい辿ってそちらを見ると、そこにいたのは秋月会長で。
なんで秋月会長を見たんだろうと思考を動かすよりも早く、すっと人影が映り込む。
さっきまでの笑顔が一変し、少し意地悪そうな顔をしたナツキだった。
「何見てんの。そんなボヤっとしてると、間に合わなくなるんじゃねー?」
突然雰囲気が悪くなった事に萎縮したり苛立ったりするよりも、意味のわからなさが先に立つ。
でも言ってることは至極ごもっともだったので、昇降口へ向かおうと足を踏み出した。
リーチの長いナツキは、今度こそ私よりも先を行く。
見てるかどうかはわからないけど、私は秋月会長に、
顔は見ないまま、軽く頭を下げた。
なんでそんなことをしたのか、自分でも良くわからないけれど。
ひとつだけわかるのは、私がおじぎした時に顔を見なかったのは、
秋月会長のリアクションを、見ないようにしたという事だけ。
何も返さないという選択をされたら……と思ったら、
怖くて見れなかった。



