──反応は、ない。
聞こえない距離じゃないのに。
胸に鉛を押し込まれたみたいに、鈍く冷たさが広がる。
鉛は重く、苦しい。
「結香チャン。
オレの事、忘れてねぇか?」
ふっと笑うナツキの吐息が耳にかかり、自分が今どんな状況下かを思い出す。
私の横顔の隣には、ナツキの顔が至近距離にあるという、
この状態に。
そして目の前にナツキの手が伸びたと思うと、
頬を掠めて耳の後ろへ回り、
壊れものを扱うように手のひらが触れた。
無理矢理ではないけど、私の意思でもないチカラで、
正面を向かされる。
「挨拶もいいけど、オレと──」
「ナツキ」
強くもなく弱くもない低い声が、すぐ近くで発せられた。
さっき挨拶した距離よりも断然近い、すぐそばで。



