見えないように溜め息をつきながら、椅子から立ち上がる。
そして気付かれないように、チラッと時計に目をやった。
いつもなら、もう来てる時間。
それどころか、とっくに過ぎてる。
やっぱり、もう来ないのかもしれない……
「ごめんなさい、私ちょっと用事が……っ」
気付いたら口が勝手にそう言っていた。
カバンをナツキから取り返すべく、
ひったくる勢いで手を伸ばす。
「あっ」
「本当ごめんなさ……いっ!?」
ぐっとカバンを引っ張ったけど、
チカラが足りないのかナツキの手から外れない。
それどころかカバンごと引き寄せられてしまった。
「どこ行く気」
「だ、だから私、用事が……」
ぎゅうぎゅう引っ張るけれど、
カバンを離してくれる様子はない。
こちらは精一杯チカラを入れているのに、ナツキはニヤニヤと笑う余裕すらある。
「は、離して下さい」
揉み合うまではいかないけれど、ちょっとした押し問答のようなものが始まりかけたその時。
「……ダサ」
背後から冷たい一言が飛んできた。



