家に向かう最後の曲がり角。
家まであと数十メートルというところ。
そこでバイクは止まった。
止まる時に少し前のめりになった私の体を、秋月会長の背中が受け止める。
「降りろ」
そんな声が聞こえた気がするけど、よくわからない。
だけど止まったままなので、多分合ってると思う。
なんとかかんとかバイクを降り、カバンを受け取って礼を言う。
「ありがとうございました」
ペコリと下げた頭にブルンッとふかす音が返事のかわりに聞こえたかと思うと、頭を上げたときには既に、バイクは跡形もなかった。
風と共に去りぬ、って言えば聞こえはいいけど、
普通にただの無礼だからね?
でも送ってくれたことに変わりはない。
何はともあれ家の真正面にバイクを停められたりしなくて良かった。
家族は仕事でいないと思うけど、あんな爆音で横付けしたら、ご近所様に迷惑だ。
そう思ってはたと思い当たる。
家まで行かずにここで降ろしたのはもしかして、
気を、使ってくれたんだろうか。
「……まさかね」
そう呟いて、私は家へと歩き出した。



