抱き締められてる錯覚に陥るくらい近い位置に腕と頭を置かれ、
掠れた低音と吐息で私の耳朶を揺らす。
「オマエが朝見てたのは、本当にたったひとりだけだったんだな」
朝……そう言われて、言外に、風紀委員長を覚えてなかった事をさしてるのだと気付いた。
ユキトさんばかり見てたから、覚えてないのだろう、と。
──でも、なんでそんなに、苦しそうなの。
私の心臓までもが、潰されてしまいそうなほどに。
「俺を覚えてたのは……ユキトのそばにいつもいたから、か……」
さっきまでの、登校する生徒でざわついた感じはいつしか消えていて、
騒音のない空気を伝う声は、静かに私の鼓膜に届いた。
些細な物音でかききえそうなその言葉は、
耳元で呟かれているのに、ひどく遠い。
「ホント、ウゼェよ」



