初めてバイクへ搭乗した私への配慮というものが、会長からは全く感じられない。
出発するという声すら掛けられることはなく、
エンジンの小うるさい音が跳ね上がったかと思うと、
ぐんと加速して、それに見合うGを身体全体に感じさせられた。
構内から公道に出ると、見慣れているはずの景色がいつもよりも少し高い視界だ。
破裂音のような大音声のバイクに、対向車のドライバーが皆振り返っているように感じる。
──バイクってこんなに音うるさいんだ。
爆音と称してもなんら問題ない、鼓膜を破りそうなその音の中にいて、会長は耳が遠くなったりしないのだろうか。
私はもう既に自分の吐息すら聞こえないというのに。
そして赤信号で止まったときに漸く、会長は後ろをチラリと確認した。
「オマエの家はどこだ?」
わからないで走ってたのかい!!
心の中で突っ込みながら、大声張り上げて場所の説明をした。



