もはや自転車置き場とは言えないその場所にそれはあった。
草木に隠すようにして置かれていたそれを、秋月会長は慣れた手つきで出してくる。
ここからなら、すぐそこは公道だ。
うす暗い中でも眩しく見える、鮮やかなレッド。
スラリとした流線型を描く、美しいフォルム。
ヴィークルに詳しくない私が言うのは、これがやっと。
何処のなんていうメーカーが出してるのかなんてわからないけど、
それは自転車でないことは確かだった。
「か、会長……」
跨がってエンジンをふかした秋月会長に、恐る恐る話しかける。
──だめだ、かきけされる。
うちの学校って、バイク通学禁止じゃありませんでしたっけ?
そう言いたいのをグッと堪えた。
無言で後ろを指さした秋月会長に驚愕する。
これに、乗れと──?
「無理無理無理無理ッ!!」
バイクなんて乗ったことないし──!
そんな私の拒絶も虚しくヘルメットを突き出され、私は泣く泣く後ろへと跨がった。



