翌朝の寝起きは、あまり良い状態とは言えないものだった。
じとりと質量が増したような気のする精神を、ズルズルと引きずりながら、
朝食をとり身支度を整え、漸くたどり着いた玄関。
ドアを開けると、真っ先に目に飛び込んでくるのは、赤……の筈だった。
ここんとこずっと、そうだったのに。
目の前にあったのは真っ赤なバイクじゃなくて、
何故か自転車だった。
ありふれたシルバー色の自転車のわきで佇んでいるのは、秋月会長その人に変わりない。
面倒くさそうに自転車へ手を添え、支えていた。
「……あれ?」
口に出してしまった中途半端な疑問の声に、秋月会長が拾って答えてくれるわけもなく。
「乗れ」
シルバー色の何もいじられてない荷台そのままを、くいっと指しただけだった。



