「藍川結香さんが、僕に訊きたいこと、ねぇ。……なんだろう」
小首を傾げながら、『なんでも訊いて』とばかりにフワッと笑う。
「ええと、あの、その前に場所を変え──」
ダンッと、私の台詞を遮るように、鼓膜が破けそうな程の音がたった。
心臓がはじけるんじゃないかってくらい驚いて、音の主はと見てみれば、
秋月会長が何事もなかったかのように書類へ目を通している。
どうやら音源は、彼の手元にある、紙を挟むボードのようだ。
机に叩きつけられたことにより生じた音らしい。
誰一人、言葉を発する余裕のある者はいないのか、サキでさえ音の激しさにのまれたようで、秋月会長の方をじっと見ている。
その間秋月会長は、ちらりとも視線を向けてこない。
感情の起伏が見えない能面でもつけている疑惑が、私の中で持ち上がる。
それを部分的に否定するように、口だけが薄く開いた。
「執務中だ」



