「コイツ、全女子生徒の名前を覚えてるんだよ。
こんな無害そーな顔して、すんげーたらし。
アンタみたいな、男に免疫のないヤツは、話したりしただけでも孕ませられるよ」
「やだなぁ。営業妨害しないでよ」
サキの言葉に眉をひそめ、軽く頬を膨らませつつ口をとがらせて文句を言う姿は、
青年というにはまだ早すぎる。
かろうじて声変わりしてるのが、彼はれっきとした男の子なんだと私に認識させた。
私に向き直って、にこっと笑った顔は、甘い砂糖菓子みたいに、とろふわ。
つられて笑った私の顔は、少し引きつってるのが自分でもわかる。
──『営業妨害』って……?
「アンタ、なんか訊きたいことあるんじゃなかった?
ぼさっとしてないで、ちゃっちゃか訊いちゃいな」
『営業妨害』に思考がかかりきりになりそうだったところに、そんな声が聞こえてきた。
正確には私が訊きたいと思ったんじゃないけど、そんなこと言ったらサキに叩かれそうだから、
私はコハルくんに訊いてみることにした。
だけどここじゃ落ち着かない。
会長もいるし、いつユキトさんが来るかわからないし。
だからコハルくんを連れ、どこか他のところで訊こうと思った。



