「行くぞ」
無愛想な声が、いまに限っては救世主に思えた。
この人ならばいつものように、私が置かれている状況なんてお構いなしに、
教室から連れ出してくれるかもしれない。
人の話を聞かず、空気も読まず、
いつもの理不尽さで、私を帰らせて下さい……!
「秋月会長……っ」
いつもと違う私の反応に驚いたのか、秋月会長は一瞬動きが止まった。
「行き──」
「アキ、今日そっち行くから」
『行きましょう』と言いかけた私の言葉に被せ、サキが先回りして、
逃げ道を塞ぐ牽制をしてしまう。
真偽を確かめるためか、秋月会長がチラッと私を見た。
瞳の奥は読み取れない。
私はそこで『行かない』という意思表示をすれば良かったのに、
真っ直ぐに向けられた秋月会長の視線に、心臓がどきりと跳ね、思考が弾け飛んでいた。
ほんの刹那だったけど、
鋭く光った瞳は私を掴んで。
息苦しさに私は目をそらしたけど、
ドキドキと鳴る心臓は、おさまらなかった。



