……気まずいんですけど。
ひとしきり泣いたあと、ぼんやりと開いた私の視界に、秋月会長の脚が映ったとき、
申し訳ないながらもそんな思いが頭をよぎった。
もしドアがぶつかった痛みで泣いてたと思われてたとしたら、
責任を感じて付き添っていてくれたのかもしれない。
辺りはもう薄暗くなっていて、電気をつけていない保健室はだいぶ暗くなっていた。
こんなに付き合わせてしまって、怒ってるだろうか。
呆れてるだろうか。
困り果ててしまったけれど、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。
「あの……」
恐る恐る声をかけてみたけれど、反応がない。
思い切ってもう一度、今度は少し張った声で。
「あのっ……!」
ビクッと体が揺れて、
うっすらと開いた瞳が私を捉えた。
射竦められるような力強さに、私は思わず息を飲む。
そこにいたのは、狼のような孤高さを眼鏡の奥の瞳にたたえた、見たことのない表情の会長だった。



