悲しき恋―時代に翻弄されて―

「わ、」

彼女は思わず感嘆の声が零れた。
目の前に広がる壮大な深い青。太陽の光が反射してキラキラと輝く水面。
なんて、美しいんだろう。

風に乗って潮の香りが千与の鼻を擽る。その香りさえも綺麗で、千与は駆け出した。

一人で砂浜を歩き、波に足を濡らす。ひんやりした感覚が初夏にぴったりだった。幼い子供のようにはしゃぐ彼女を見る者は誰もいない。
きっと海になど、興味がないのだ。

こんなにも壮大な海を綺麗と思う心。それさえ持っていないのは悲しい。

千与は白い砂浜に身を沈めて眠りに着いた。潮風に包まれて眠る彼女はどこか穏やかだった。