彼女が神への忠誠を誓って、数ヶ月が経とうとしていたある日。

千与の目の前がモノクロになった。

父が戦に行く。そして、由親さえも、戦へ。彼は初めての戦、初陣だ。もちろん二人とも信長の下で戦う。

父は一回り程信長の年上だが、秀吉や光秀程ではないけれど彼に可愛がられていた。それのお陰で大名まで地位が上った。
そして由親。いつものように剣術を練習しているとたまたまそこを通り掛かった信長のおめがねに適ったのだった。

千与の思う通りになり、落胆した。
もう、会えないかもしれない。そう考えるだけで震えが止まらない。恐怖。それが小さな千与の心を刔る。その恐怖が塩水に変わり瞳から流れた。