前髪を整え終わり
鏡をしまった優子は
少し体を乗り出した。


そして助手席の男に

「慎吾くんの先輩なんですか?
名前は?」

とキンキン声できいた。

「アホか!お前がマトモにクチきいていい先輩ちゃうねんぞ」


慎吾はあせりながら
優子をとめた。


先輩が怒ったと心配になり
助手席に目を向ける。


でも怒った様子はなく
口元に笑みを浮かべている。


「山田」

男はそう名乗った。


「下の名前は何ですか?」

とめる慎吾を押しのけ
優子は続ける。


「太郎」

それを聞き
一番最初に吹き出したのは慎吾だ。


「偽名ですか?」

美佳も笑い出した。