ジュエリーボックスの中のあたし

その声とともに橘さんはあたしから離れた。



いや、離された。



橘さんは後ろにつんのめるように引っ張られたかと思ったら、壁に思いっきり打ちつけられた。



そこにはユキがいた。



あたしが今まで見てきたどれでもない表情のユキ。



その表情といったら氷よりドライアイスより冷たい。



冷酷な顔がそこにあった。



「ユキ！」



あたしは起き上がり咄嗟にユキの名前を呼んだ。


しかしユキがそれに応えることはなく、振り向きすらしなかった。



ユキは倒れ込んだ橘さんの襟首をつかみ込むと、今度は自分の拳を思いっきり橘さんの顔にぶつけた。



その衝撃で橘さんはまた壁に吹っ飛んだが橘さんが壁に倒れ込むより先に、ユキはまたしても橘さんを捕まえては殴った。


体は明らかにユキの方が華奢なのにも関わらず、橘さんはその止めどない攻撃に抵抗することすら出来ない。



本当に死んでしまう。



「ユキ！！！」



あたしは呼びかけるというよりは叫ぶようにその名前を口にした。