ジュエリーボックスの中のあたし

「え?何言ってるの?橘さん…。」



「美里、君は突然家に帰ってくる日数が減ったね。僕がアフターの後君をこのマンションまで送った日だって君はここに帰っては来なかった。僕には帰って来ていると嘘をつきながら。」



「…た、ちばなさん?どうして…」



「こいつの目に隠しカメラをセットしていたんだ!忘れたのか?!これをプレゼントしたのは僕だ!」



橘さんは狂ったようにそう叫ぶとミッキーをあたしに投げつけた。



あたしは震える手でミッキーを拾い上げた。



よくよく見るとミッキーの片方の目の素材が違う。黒いのだけれども少し半透明だ。



どうして今まで気づかなかったのだろう。



あたしは今まで彼に監視されながらこの部屋で過ごしてきたのか。



「僕とアフターした日君は外人野郎を家に上げ込んだばかりでなく、このベッドに彼を寝かせた!しかもその次の日から君はここに帰っては来なかったね!」



いよいよ本気で怖くなった。



逃げたいのに体中が凍ったように動かない。



「僕はずっと自分の部屋に閉じこもって君が帰ってくるのを待っていたんだ!ずっとだ!おかげで仕事は手付かず、妻とも離婚だ!」



「じゃあ、な、んで…」



「なんでだって?美里を愛しているからだ!君の前で僕はどれだけ君に優しくしたと思ってる?どれだけ君に貢いだ!?それなのに君は他の男にうつつを抜かしている!僕を裏切ったんだ!」



橘さんはもの凄い勢いであたしに迫ってくる。



あたしは反射的に玄関の扉へ手を伸ばした。