ジュエリーボックスの中のあたし

「…橘さん!?」



扉の向こうにいたのは橘さん。



しかしそれを理解するのにも少々時間が掛かった。



顔色はますます悪い。



目も血走っている。それに少し痩せたよう。



そこにいつものような優さはなく、険しい表情でこちらを見下ろしていた。



とても元気なころの橘さんとは似ても似つかない。



「橘さんどうなさったんです!?え?というよりどうしてあたしの部屋がおわかりになったの?」


橘さんはあたしの言葉を無視して、靴も脱がずにズカズカと部屋に上がり込んできた。



「ちょっ、橘さん!」



橘さんはミッキーがある棚まで来るとうつぶせのミッキーを手に取った。


「あのっ、どうしてここに?」



あたしは橘さんが怖くて、いつでも逃げ出せるよう玄関に近い場所からそっと問いかけた。