ジュエリーボックスの中のあたし

駐車場で明らかにあたしと同業の女とすれ違った。



案の定、この異様な光景とユキの美しい顔にあ然とした顔つきだった。



誘拐か何かと思ったろうか。



女は一瞬、携帯を取り出し何か迷ったような素振りを見せた。(警察を呼ぶかどうか迷ったのだとあたしは思う。)



しかし暴れることのないあたしの様子を見て、考えを改めたように携帯をバックにしまった。



本当の誘拐なら前に一度ユキにされたのだ。



あの日、初めてユキに出会ったあの日、体だけでなく心もすべてさらわれてしまったの。



ユキはいつの間にか車にたどり着いていて、無理やり担がれた時とは裏腹にそっとあたしを助手席においた。



そうして自分も運転席にサラリと乗り込むと出発時と同様、急発進をして優雅に駐車場を飛び出した。