ジュエリーボックスの中のあたし

この返しは予想してなかった。



あたしは面食らった。



てっきり新しいマンション見つけろという意味だと思ったから。



まさかあたしの家をユキの家1つに固定していいなんて思わなかった。



「え?ユキの家に住んでいいの?」



「うん。だからすぐ帰ろう。」



だってそうは言ってもいろいろ手続きがある。



引き払うにしたって面倒だし、あたしの服やバック、靴の半分はこのマンションにある訳だし。



それを急にもう帰って来ない方がいいと言われたって。



あたしがなんと答えようか迷っているうちに、ユキはミッキーをしっかり下向きにしてあたしの手を引っ張った。



「とにかくここから出よう。」



ユキは勢いよく玄関のドアを開けた。



ユキの余りの速さと不意をつかれたことで、あたしは靴を履き損ねてしまった。



「ユキ!あたし靴履いてない!」



ユキの方はというとあの素早さの中でいつ身に付けたのか、しっかり両足に靴を履いていた。



ユキはあたしの言葉を無視してどんどん進んでいく。



ついにはエレベーターを降りて、外まで来てしまった。