ジュエリーボックスの中のあたし

パチリ



ユキの部屋と違い玄関から居間まで廊下なんてないあたしの部屋は、明かりを付けたとたん部屋の中が一望に見える。



「うわあ、ここがミリが住んでた部屋かあ。」



何に感動したのかユキは嬉しそうな声を上げ靴を脱ぎ捨てた。



「住んでたんじゃなくて今も住んでるのよ。」



訂正を入れたものの、ユキが過去形にした事が何故だかあたしは嬉しかった。



今は俺と住んでると言われたような気になったから。



「意外と殺風景な部屋なんだな。」



「あんたに言われたくないよ。」



事実白を基調としたあたしの部屋は小物などはほとんどなく、最低限の生活必需品、それから多少部屋を飾る植物だとか本だとかがあるだけだった。



そうは言ってもユキの部屋にかかれば、どんな部屋だってものがありすぎるという事になってしまうんだけど。



「なんか居心地いいなあこの部屋。」



「ユキの部屋は何もなさすぎるから。」



「そうだよなあ。でも物が増えるとあの部屋に愛着わいちゃうしなあ。」


それがいけないことなの?



あたしはまたユキがいつかいなくなってしまうんじゃないかと、いわれのない不安に襲われた。



「でも今はミリがあの部屋にいるからどっちにしろ愛着がわいてきちゃってるしなあ。家具増やすのも悪くないか。」