ジュエリーボックスの中のあたし

ビッビッビー



ビッビ



ビーーー



もはや一つの車からではないクラクション。



クラクションとユキの言葉、2つに焦らされて涙なんていつの間にやら止まっている。



この非常識のユキをなんとかしなくてはいけないあたしは、もう泣いてるどころではない。



「ユキ!もう泣いてない!涙止まったから!」



あたしがそう言うとユキはやっとあたしを離して、ほんと?と聞きながらあたしの顔を覗き込んだ。



ビーーービーーー



「ほんと。泣いてない!ユキ青だよ!後ろの人たち怒ってるよ!」



あたしがいくらまくし立ててもユキはまるで無視。



ジーッとあたしの顔を覗き込んで、指でそっとあたしの涙を拭った。



「ほんとだ。よかったー。ミリ泣き止んで。」



ユキがホッとしたように安堵の息を漏らした。



あたしは安堵するどころではない。



何しろ今ではあたしたちのせいで道は大渋滞。



ビッビーーー



ビッビーービーーー



ビーーービーーー



「ユキ!ほらもう行かないと!」



「ああ、そうだね。」



焦るあたしとは裏腹にユキはそうのんびり答えると、これまたのんびり状態を前に戻してやっとアクセルを踏んだ。



そうしてやっとあたしも安堵の息を漏らした。



後ろの車が腹いせにか、あたしたちを後ろからベッタリくっついて煽ってきたけど、なにしろユキのこの高級車。



後車があたしたちにずっと付いてこられる訳がない。


ユキはビュンビュンスピードを上げて夜の街を駆け抜けた。