ジュエリーボックスの中のあたし

ユキの声は涙を止めるには逆効果だったとしても、外部はあたしを止められる。



ビッビー



突然のクラクションにあたしはハッと我に返った。



ユキにきつく抱きしめられているあたしが前を向く事は不可能だった。



それでも窓や空気に漏れる青緑色の光で、信号はいつの間か赤から青へ変わっていたという事はわかった。



後者からの車のクラクションに驚いて体を離すというのが一般の感覚を持った方々。



しかし普通でないのが彼、ユキ。



何しろあたしを誘拐して手駒にした男だ。



普通の感覚では一筋縄ではいかない。



ユキから離れようと正しい筋肉を動かしたが、あたしの体はビクともしない。



ユキはあたしをきつく抱きしめたままだ。



ビッビッビー



「ちょっユキ!信号青だよ!」



ユキは離れようともがきながら彼の腕の中でアタフタするあたしに一言。



「ミリが泣き止むまで離さない。」



あっけらかんと言ってこれ以上ないというくらい、あたしをきつく抱きしめた。



あたしはアタフタすることさえ出来なくなった。