ジュエリーボックスの中のあたし

「ユキのお父さんの名前ってジェームズなんだ。」



「そうだよ。」



「ロイルっていう名字なのね。」



「…うん。」



「お父さんが外国の人なのにユキは漢字なのね。お母さんが日本人だったの?ユキってハー」



「もういいじゃん。そんな事聞いてどうすんの?」



ユキの声はとても静かだった。


しかしいつになく冷たいその声に背筋がヒヤリとした。



まるでこれ以上俺の中に立ち入るなとでも言いたげだ。



こんな風に冷たく拒絶されたのは初めてで、あたしはショックのあまり謝る言葉さえでてこなかった。



無言の車内。



聞こえるのは車のエンジン音だけ。



しかしこの高級車はとても静かにスマートに走り、その音すらほとんど聞こえてはこなかった。



静寂。



相当気まずい沈黙の空気が車内いっぱいに垂れ込めていた。



あたしはどうしようもなくなり、ただ黙って窓の外を見るばかりだった。


「ごめん。」



しばらくしてユキがぽつりと呟いた。