ジュエリーボックスの中のあたし

始めは強引なユキに戸惑っていたけれど、あたしはエレベーターの中でゆっくり考え直した。



何しろユキの部屋はこの高層マンションの最上階。



長い長いエレベーターの中では、考える時間がたっぷりあるのだ。



ユキの言ってることは訳がわからないけれども、どっちにしろエントランスに通帳が落ちていないか確かめる必要はある。


それに1人であたしのマンションに向かうとなればタクシー代もかかるしめんどくさい。



なによりもこんな風に焼きもちを焼いてくれるのはすごく嬉しい。



まあ連れて行ってもいいか。



エレベーターを降りる時には、もうそんな気持ちになっていた。



なんともげんきんなあたし。



タクシーを捕まえようと


通りに出ようとした瞬間ユキに腕をつかまれた。


「ミリ、こっち。」



引っ張りこまれた先は立体駐車場。



その駐車場一番奥のある一角に1つの貼り文字が。




ロイル・ジェームズ・由貴様専用




そしてその先にはシルバーの車が、優に駐車二つ分のスペースを利用して豪快に止めてあった。